NPO未来化プロジェクト 理事 川端務夢

2014年(平成26年)、民間の有識者でつくられる日本創生会議による消滅可能性都市の発表は衝撃的なものでした。定義は「2010年から2040年にかけて、20~39歳の若年女性人口が50%以下に減少する市区町村」であり、全国の市区町村1,799のうち896がこれに該当すると推計されました。

周知のとおり日本は人口減少・少子高齢化が急激に進んでいます。日本人口は2008年の1億2808万人をピークに減少を続け、2017年(平成29年)の国立社会保障・人口問題研究所の発表した将来人口推計では2065年には総人口が9000万人を割り、高齢化率(65歳以上)は40%近い水準になると推計されています。
この人口減少に加え、地方の存続が難しくなっている要因に、地方から都市圏への人口の集中があげられます。中でも若年層の都市部への人口集中は未だに歯止めがかからない状態で、今後地方にとって少子高齢化はより一層進むと考えられます。

この地方の人口減少、少子高齢化に歯止めをかけるため様々な地方自治体がアクションを起こしている中、2019年興味深い調査研究発表が日本福祉大学の大林由美子教授、末永和也教授によってされました。

この研究は消滅可能性都市として指摘された愛知県南知多町の人口流出を防ぐための方策や人口増加の方策を検討するために、南知多町(行政)が行った住民意識調査(18歳以上の男女1500人を対象)の結果の分析と、南知多町で活動するボランティア・専門職195人に対し大学が独自に行った同様の意識調査の結果を分析したものです。

特にこの調査で注目したいのは

『この意識調査で、「あなたは、南知多町に住み続けたいか」という問いに、「永く住み続けたい・当分は住み続けたい」と答えたのは、住民・専門職が70%強であるのに対し、年齢別では60代以上が80%であり、ボランティアを行っている人の回答では90%近くであることが分かった。そしてこの調査により、自ら社会や地域のために貢献しようと考えることは、永く住むことを前提とした思考であり、地域の課題を解決する人財を発掘するために60代以上の住民に関わってもらえる可能性が高い、またボランティアに関わる(地域の中で何らかの役割を持つ)ことにより地域の課題を「自分事」としてとらえ、「住み続ける」と考えることにつながり、それが人口流出を防ぐ方策の一つになるという事が示唆された。』と結論づけられているところです。

全ての「地方」で持続可能な地域のために行動を起こさなければならなくなっている今、この調査研究の結果は大変興味深くまた参考になるものです。

地域の中で何らかの役割をもったり、アクションを起こし地域の将来を「自分事」と考える人財を増やすことが持続可能な地域のために大事なことであると考えます。

 

※参考;日本福祉大学社会福祉学部

『日本福祉大学社会福祉論集』2019年9月

人口減少地域(消滅可能都市)における人口対策の検討

大林由美子・末永和也