NPO未来化プロジェクト 理事 川端務夢

ソーシャルビジネス業界最大手のボーダレス・ジャパンは、社会的課題について、「社会の欠陥や不合理から生まれている問題で、実際に社会で生活していく上で支障をきたすレベルの大きな問題」と定義しています。

環境問題、貧困問題、少子高齢化、人口の都市への集中、 国際化への対応、高齢者・障害者の介護・福祉、子育て支援、 青少年・生涯教育、まちづくり・まちおこし などなど 長中期的に社会生活に支障をきたすレベルの問題が社会的課題とされているわけです。

これらの社会的課題に直面すると多くの方はまず目の前の「見えている」コトだけにアクションを起こしがちです。

例えば中山間地域の人口減少と共に子どもが減ったことで幼稚園や小学校が廃校になってしまうという問題があります。(現実に全国の中山間地域に起きています。)

子どもを増やさなければ小学校が無くなる幼稚園が無くなる。この課題の解決のために地元の若者を対象にした婚活事業「都会の若者×中山間地域の若者」を始める。「移住促進事業」として空き家を無償あるいは安い家賃で賃貸する。など様々な取り組みが行われています。

しかし、それだけで課題の解決になるのでしょうか?

この課題の本質は中山間地域に住む理由が無くなった、あるいは住む理由が希薄になった事で人口流出が進んだことです。すべての中山間地域がそうであるとは言えませんが、要因の一つに中山間地域の主産業、例えば「林業」の衰退が大きな要因であると言われています。生活を支える「仕事」がそこにあり、生活するための最低限の環境が整わなければ当然人口は減少していくわけです。新たな産業(仕事)の創出が必要です。しかしそれだけでは足りません。情報インフラや、民間インフラの確保、コミュニティ形成や場づくり、福祉といった領域にもやらなければならない事が見えてきます。

社会的課題の解決は、見えている部分への応急処置では解決が難しく、本質の見抜き複合的な「しくみ」を作ることだと思います。
現在掛川市の中山間地域では、森林保全のNPO法人、まちづくり協議会など複数の地域セクターがタッグを組み廃校の可能性がある小学校の存続に取り組みを始めています。

その取り組みは

1,観光事業の充実  農家民宿事業者と地域住民、まちづくり組織が連携した協議会を立上げ、倉真から日坂までを農家民宿群
として売込む。秋祭り体験ツアーなど里山を体験できる企画を住民が主体となり運営。
2,山村留学の仕組みを作り、地域住民が協力してホストファミリーに。
3,NPO法人がはじめた「森のようちえん事業」を拡大、小学生・中学生、また子どもたちの保護者向けの定例的な自然体験活動
や、子育ての悩みを解決するための講座の開催。
4,山間地の野草を原料とした「美容石鹸」の製造販売
5,関東圏への企業へ向けた倉真地域の「木」で製造した事務用家具の販売
などなど、大変複合的で「仕事」の創出、関係人口の拡大、移住しやすい環境づくりなど多岐にわたっています。

これらの活動を多様な地域セクターが協力して進めることが出来たるのも、「学校が無くなる」という課題の本質を地域のみんなで分析し、新たな産業の創出や教育環境の充実など多様な取り組みを行っていく必要性を見出すことが出来たからです。

まさに社会的課題の解決は課題の本質を見抜く力が大変重要と言えます。